パワーデバイス(パワー半導体)*1のひとつIGBT*2。これは、電車やEV(電気自動車)の分野において電力を効率よく使うには欠かせないデバイスでスイッチングモジュールですが、大きな電流が流れます。そのため接続には複数のボンディングワイヤ(配線ワイヤ)が配されています。このボンディングワイヤの1本に接触不良等が生じると(他のワイヤに電流が多く流れることになり、そこに負担がかかって)、経年劣化が加速されることになり破壊に至ることになります。
ボンディングワイヤ(配線ワイヤ)を流れる電流バランスを生産ライン上で非破壊により精密に検査できるのが、磁束センサ「センサアレイモジュール」です。

インタビュアー:この様なパワーデバイス・IGBTの品質検証は、これまでは非破壊検査ではできなかったのですか?

そうです。製造ラインの検査としては完成品検査として最終的なIN/OUTの確認しか行われていませんでした。センサアレイモジュールならIGBTのボンディングワイヤにかざすだけで電流測定が可能で、実装工程のボンディングワイヤのトラブルが発見でき、IGBTの高信頼性を確保できます。

*1電源やモータ制御などのように大電力を消費する電子回路で使用される半導体素子
*2 Insulated Gate Bipolor Transistor(絶縁ゲート・バイポーラ・トラ

複数おボンディングワイヤの電流バランスを
測定するためにコイル基板の積層を実施

この技術開発は、パワーデバイスの高信頼性を確保する超小型センサおよび製造ライン向け検査装置の開発として経産省の「サポーティングインダストリー(ものづくり基盤技術)」*3に認定され、平成24年度からの3年間、補助金を受けて取り組みました。

インタビュアー:開発は、どのくらいまで進んでいますか?

「センサアレイモジュール」の特長は、複数のボンディングワイヤの電流バランスを測定するためコイル基板の積層を実施したことですが、実際には、コイル基板を16枚および32枚積層したものを開発しました(写真1)。積層誤差によるコイルの位置ずれが問題となるので、これからはコイル基板の積層精度を上げるフェーズに移行することになります。
超小型(1.0mm×1.0mmおよび0.5mm×1.0mm)コイル(写真1)

*3「戦略的基盤技術高度化支援事業(略称:サポイン事業)」経済産業省
「中小ものづくり高度化法」の認定を取得した研究計画で、とくに中小企業・小規模事業者が大学、公設試等の研究機関等と連携して行う、製品化につながる可能性の高い研究・開発及び販路開拓への取組を支援するもの

パワー・デバイス検査装置以外でも市場を探索

「センサアレイモジュール」は、パワーデバイス検査装置に広く使われていくことが期待されますが、それ以外での例えば面電流の測定等を必要とする分野については、これからの市場探索となります。